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『海と毒薬』

海と毒薬 (新潮文庫)

遠藤周作著『海と毒薬』新潮社、1960年。

 

 第5回(1958年)新潮社文学賞、第12回(1958年)毎日出版文化賞文学・芸術部門受賞作。新潮社文学賞は、亀井勝一郎河上徹太郎川端康成河盛好蔵小林秀雄中島健蔵中村光夫山本健吉、新潮社出版部長が選考委員。毎日出版文学賞は、面倒だから省略。受賞当時、遠藤周作34歳。

 

 4月はやはり学校のはじまりでもあるし、色々あって、読むのにかなり時間がかかってしまった。時間がかかったというより、途中に何度かしばらく放置してしまったから、休憩期間が多かったというべきかな。まあ、『海と毒薬』を読むのは2度目なわけですけども。結構好きな本で、初めて読んでから、心に印象がかなり残っていて、それでまた読みたいなあって思って、読み返したんですよお。遠藤周作の小説によくある気がするんですけど、本筋のストーリーが一旦進んでから、そこに登場した人物たちの個人史が一人称とかなんかそんなんで語られなおして、どういうふうな経緯、心境で彼らがその事件というかメインの物語に参加していたかが、わかってくる、という構成が、めっちゃ好き。『海と毒薬』だと、あの看護婦の手記がいい感じですね。個人的には。何回も思い出してしまう。遠藤周作の小説は、余韻がすごいんです。

医学部の西には海がみえる。屋上にでるたびに彼は時にはくるしいほど碧く光り、時には陰鬱に黝ずんだ海を眺める。

  屋上から見える黒い街と黒い海、というイメージがなぜか好き。

遠藤が九州大学病院の建物に見舞い客を装って潜り込んだ際、屋上で手すりにもたれて雨にけぶる町と海とを見つめ、「海と毒薬」という題がうかんだという。評論家の山本健吉は、「運命とは黒い海であり、自分を破片のように押し流すもの。そして人間の意志や良心を麻痺させてしまうような状況を毒薬と名づけたのだろう」としている。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/海と毒薬)

 苦い諦めといいようのない疲労......